別荘ではありがちなこと
私が幼い時、釣り好きの祖父が別荘を買った。
その別荘を相続したのが私の父親、父親は現役で働いているため、別荘へ行って寛ぐ時間はない。
父親、「子供達だけで先に行ってなさい」
私と弟、「えー今年も」
別荘へ行くのが嫌なのではない、掃除をするのが嫌なのだ。
別荘を利用するのは学校が夏休みの数日だけ、1年ぶりに別荘を訪れると木々が生い茂っており、まずは玄関付近の草刈りをしなくてはならない。
草刈りなどの面倒なことを子供にやらせ、片付いたら父親と母親が別荘にやって来る。
草刈りをしている間に別荘内の換気をするのだが、
私、「何をしてるの?早くしろよ」
弟、「カギが開かないの」
私、「何をやらせても出来ないな、お前は」
弟、「だったら、兄ちゃんがやってみてよ」
私、「・・・」
弟、「兄ちゃんだって、開かないじゃないか」
「別荘のカギ」と書かれた札が付いているのだから、別荘の玄関のカギで間違いはない、どうして開かないのだろう?
釣り好きの祖父が買ったため、別荘は海を望める高台に建っており、夏でも海風が吹くと体は冷える。
夜になり辺りが暗くなると、弟は怖がり「家に帰ろう」。
怖いのは私も同じだ、弟とは歳が2つしか違わないのだから。
別荘に向かって明かりが近付いて来たため、てっきり両親の車だと思ったのだが、別荘で停まったのは両親が乗る車ではなかった。
その車から出て来たのは作業着を来た中年男性。
中年男性、「どうしたの子供達だけで、親はいないのか?」
見ず知らずの人に声を掛けられ、弟は警戒して私の背中に隠れた。
私、「両親は買い物に行って、もうすぐ帰って来ます」
中年男性、「だったら良いね。てっきりカギが壊れて別荘に入れないのかと思ったから」
子供だった私は、カギが開かないのは、カギを間違えて持って来てしまったと思っており、鉄製のカギが壊れる発想はしていなかった。
弟、「入れないの」
私、「余計なことを言うな」
中年男性、「カギが開かないのか?」
弟、「うん」
私、「黙ってろ」
中年男性、「この辺りは海に近いから塩害でカギが良く壊れるんだよ」
中年男性の乗って来た車の中を覗くと、工具セットらしきモノが積んであったため
私、「カギを開けられるのですか?」
中年男性、「カギを見させてくれる?」
弟、「うん」
カギ穴を覗くと、中年男性は車からスプレー缶の潤滑油を持って来て、カギ穴に噴射。
中年男性、「やってごらん」
家から持って来たカギを差し込むと、カギは根本までスンナリ入り簡単に回せた。
別荘のカギは開き中に入ると、玄関にはスプレー缶の潤滑油が置いてあったが、缶の底は錆び付いていた。
後に、その中年男性はカギ業者の人と分かり、お礼も兼ねて別荘のカギはセキュリティの高いものに変えてもらった。