どうしてそこにあるの?
母の葬儀も終わったが、その後の整理や四十九日の法要の準備と用事がいろいろあり、忙しい日々送っていたある日。 その日は香典返しの品を決めるため兄弟が実家に集まった。私も車で実家に行き、いつものように駐車場に止め、鍵を抜いた。香典返しをしないといけない親戚の一覧表を私が作っていたので、そのファイルと鞄を持ち、車を降りた。 兄弟たちはすでに来ていて、話し合いは約1時間で終わり、私は兄を職場に送って行くことになったが、車の鍵がない。 ポケットの中を探し、鞄の中の物をひっくり返してみても出てこない。家の中で歩いた場所を思い出し、辺りを探すがない。それでは車の中かもと探し始める。椅子の上はもちろん下側や助手席の間も見てみるがない。降りるとき落としたかもと車の周辺を探すがない。 そうこうするうちに兄も時間がなくなり、結局姉が送ってくれることになった。 一人になった私は気を持ち直してもう一度あちこち探してみる。でもない。頭の中は「なんで?なんで?」ともはや真っ白。こうなったらしかたない。携帯電話で夫に電話してスペアキーを持ってきてもらうことにした。 「あ~あ、今日はついてないなあ」とへこむこと約10分。夫がやってきた。私の車の横に止めて、にやにやしている。「こいつまたやったな」という顔だ。最近物忘れが多い私に夫はいつものことだと思っている。そしておもむろに私の車の扉を開けて、助手席の間を見ている。「そこ見たけど」と思っていると、「あったよ」の声。夫の右手に車の鍵、あんなに探したのに、奥の方に入り込んでいたらしい。 あ~あ、これでまた夫に借りができた。鍵が出てきたうれしさと自分で見つけられなかったくやしさとが入り混じりながら、家路についた。