冬と彼氏とテンキーロック

冬と彼氏とテンキーロック

私は社会人になって初めて一人暮らしを始めました。その時中距離恋愛をしてた彼氏を追いかけ、親の反対を無視して半ば無理やりその町に引っ越しました。初めてのアパートは学生向けの1K駐車場2台つき。水道2500円で使い放題。車がないと生活できないような田舎町で観光名所も有名グルメも商業施設もほとんどない土地でした。それでも彼氏と半同棲をスタートできると思うと私には特に問題はなかったんです。ただ唯一心配だったのがその町が豪雪地帯だったということ。そのためほとんど雪が降ることがない地域出身の私が、新社会人として豪雪地域で一人暮らしスタートという状況に両親は引っ越しをずっと反対していました。しかしその町での暮らしを始めてみると思っていたより快適で、毎日こなす家事と仕事は大変でしたが彼氏に会える日も増えて、楽しくてあっという間にその土地での初めての冬になりました。実はそのアパート、鍵がテンキーロックだったんです。そこもお気に入りでした。家族が遊びに来てくれる時には合鍵がなくても番号を教えておけば私が仕事中でも部屋で待っててもらえるし、番号もすぐに変えられるし、鍵をなくすこともない。何より鍵の番号は彼氏と付き合った記念日に設定できたからです。ある日私は残業で帰宅が遅くなりました。その日は1週間以上前から大雪が続いており、それでもなおしんしんと静かに雪が積もり続ける夜のことでした。気温はマイナス6度。車を降りて雪が少ない道を選びながらアパートのドアまで来ました。今日はもうすぐ彼氏が来てくれるからあったかいものでも作って…などと考えながら記念日のテンキーロックに入力する。反応がない。寒すぎて間違えたかなと思いつつ入力。反応なし。え?番号変わってる…?突然ぞっとしました。故障?番号替えられた?もしかして大家さんとか知らない人が関わってる?など一瞬で考えましたか、よく耳をすますとテンキーロックはピー…ピ…とかすかに音を出してるようです。最後の力を振り絞るように。思わず私はテンキーロックに手を当てて耳を近づけます。…すごい冷たい。触ってる手が凍りそうです。その時私は気づきました。そうです。テンキーロックは凍っていたのです。まるで氷のように。凍っていたため番号を入力しても鍵が持ち上がらずドアが開かなかったのです。時間はすでに22時。ホッカイロも温かいお湯なんてものもない。近くにコンビニやスーパー、自動販売機もない。同じアパートの住人は学生が多いためか不在のようでした。どうしようかと泣きそうになっていると彼氏が帰ってきたので今の状況を説明。そうすると大丈夫。二人で力を合わせようと。そう言うと彼はテンキーロックに両手を当て包み込むように閉じ、私にも手を重ねて同じようにするように指示しました。そうです。これは二人の手のひらのぬくもりでテンキーロックを解凍する作戦でした。しかしこれじゃ足りない…次に彼氏はテンキーロックに息を吹きかけ始めました。私も急いで見様見真似で息を吹きかけます。頑張って!そう思いながら温め続けると、…ガチャっと音がしてついに鍵が開きました。その瞬間彼氏と急いでドアをあけ部屋に入ります。玄関にはいると全身の力がぬけ安心が襲ってきました。彼氏がいてくれたおかげで車で一晩過ごす危険を回避できたんです。本当に良かった…。この日以来1階の部屋でしたが貴重品は置かずに窓の鍵を開けておく習慣がつきました。これが私の唯一の鍵トラブルです。次に引っ越したアパートは普通の鍵穴のドアにしたことはいうまでもありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。